貸切バスの運送約款は内容が難しいな。総合旅行業務取扱管理者の試験では貸切バスの運賃計算がめっちゃ出題されそうな予感。貸切バスの運賃計算のポイント知りたいな。
この記事は、そんな疑問に答えます。
- 貸切バスの運送約款
- 貸切バスの運賃計算
こんにちは、ツバサです。
総合旅行業務取扱管理者の試験でもよく出題されるのが、貸切バスの運送約款や運賃計算です。
海外旅行専門の旅行会社で働いている人にとっては貸切バスの運賃計算に馴染みがないと思いますが、国内旅行の実務ではよく使います。
この記事では、貸切バスの運送約款と運賃計算についてポイントをまとめたいと思います。
参考資料:国土交通省 一般貸切旅客自動車運送事業標準運送約款
貸切バスの運送約款
貸切バスの運送約款の正式名称は、「一般貸切旅客自動車運送事業標準運送約款」といいます。
とても長い名前のため、この記事では貸切バスの運送約款と言います。
運送の申込み
運送を申込む場合、次の事項が主に必要となります。
- 申込者の氏名又は名称及び住所又は連絡先
- 当社と運送契約を結ぶ者(契約責任者) の氏名又は名称及び住所
- 乗車申込人員
- 配車の日時及び場所
- 旅行の日程(出発時刻、終着予定時刻、目的地、主たる経過地、宿泊又は待機を要する場合はその旨その他車両の運行に関連するもの)
ここでのポイントは2つです。
- 契約責任者が誰なのかを理解すること。
- 申込人員は必要だが、申込人の乗車名簿は不要。
運送契約の成立
貸切バスの運送契約の成立は旅行業の募集型企画旅行の契約成立のタイミングとは少し異なります。
貸切バスの契約の流れと契約成立の時期は次の通りです。
- 契約責任者が運送申込書を記入後、バス会社へ提出。
- 契約責任者が所定の運賃及び料金の20%以上を支払う。
- バス会社が乗車券を発行する。
- バス会社が乗車券を契約責任者に交付する
⇒ここで契約成立
20%以上の申込金を支払ったタイミングではないので注意しましょう。
運送契約の内容の変更
運送契約の内容を変更する場合のポイントは次の2つです。
- 基本的には書面によりバス会社の承諾を得て内容を変更する。
- 緊急の場合は書面の提出は不要。ただし、承諾は必要。
例えば、すでに貸切バスツアーが始まっていて、道中の山道で落石があり道路が通行止めになっている場合、迂回道路を使って終着地点へ向かった時は、緊急時であるため書面での交付が難しく、契約責任者の承諾を得れば、運送契約の内容を変更することができる。
ここで「契約責任者」とは誰になるのかを整理しましょう。
パターン | 契約責任者 |
個人がバス会社へ貸切バスを申込んだ | その個人 |
旅行業者による企画旅行 | 旅行業者 |
旅行業者による手配旅行 | 旅行業者に手配を依頼した者 |
配車日時に乗客が乗車しない場合の取扱い
貸切バスを配車する当日、旅客が乗車しない場合があります。
- 旅客が当日来なかった。
- 旅客は集合しているもののバスに乗車しない。
このようなケースの場合、出発時刻から30分を経過しても旅客が乗車しない、あるいは乗車する意思を見せない場合は、当該車両について当該運送契約に係る運送の全部が終了したものとみなします。
つまり、バスは車庫に返ってもよいということになっています。
※配車時刻から30分を経過ではないので注意しましょう。
旅客に対する賠償責任
貸切バスの運送約款では、賠償責任についても定めています。
どういった時に賠償責任が発生するのかというと、その損害が車内において、又は旅客の乗降中に生じた場合に限ります。
貸切バスの運賃計算
バス会社の運賃や料金に関しては、「乗車時」において「地方運輸局長」に届け出て実施しているものとなります。
運賃に関しては、車種別に計算した金額の最高額と最低額の範囲内としなければなりません。業者が最低限の運賃を下回っていたため、行政指導が入ったニュースなどをよく見ます。
貸切バスに関わる諸費用がいくつかあります。
- ガイド料
- 有料道路使用料
- 航送料
- 駐車料
- 乗務員の宿泊費等当該運送に関連する費用
これらの諸費用は「契約責任者」の負担となります。
例えば、旅行業者の企画旅行であれば旅行業者が負担、旅行業者の手配旅行であれば旅行業者に手配を依頼した者が負担となります。
運賃の割引及び割増
運賃に関して割引と割増をする場合があります。
割引 | 学校 | 2割引き |
児童施設・身体障碍者施設・知的障碍者施設 | 3割引き | |
割増 | 特別な設備を施した車両の場合 |
※割引は下限額を限度とします。
運賃及び料金の支払い時期
運送申込書の提出時 | 所定の運賃&料金の20% |
配車の日の前日まで | 残額 |
運賃及び料金の払戻し
バス会社が原因で自動車の運航を中止した場合の運賃及び料金の払戻しは次の通りです。
目的地の一部にも到達しなかった場合 | 全額返金 |
目的地に一部でも到達した場合 | 運航を中止した区間に係る運賃及び料金を返金 |
ただし、バス会社が代替のバスを準備し提供した場合は、払戻しはなしとなる。
違約料
貸切バスの違約料(キャンセル料)は次の通りです。
取消日時 | 違約料 | |
取消 | 配車日の14日前~8日前まで | 運賃・料金の20% |
配車日の7日前~24時間前まで | 運賃・料金の30% | |
配車日の24時間前以降 | 運賃・料金の50% | |
減車両 | 予約車両数の20%以上の 車両が減少した時 |
減少した車両につき 上記の区分による違約料 |
運賃計算方法
貸切バスには2つの運賃と3つの料金があります。
運賃 | 時間制運賃 |
距離制運賃 | |
料金 | 交替者運転者配置料金 |
深夜早朝運行料金 | |
特殊車両割増料金 |
ここで重要なものは、運賃の「時間制運賃」と「距離制運賃」となります。
【時間制運賃に含まれるもの】
・点呼点検時間(出庫前)
・出庫から配車地までの時間
・配車地から到着地までの時間
・到着地から帰庫までの時間
・点呼点検時間(帰庫後)
⇒ 出庫前及び帰庫後の点呼点検時間を必ず含める。
【距離制運賃に含まれるもの】
・出庫から配車地までの距離
・配車地から到着地までの距離
・到着地から帰庫までの距離
⇒ 実際に走行した距離となる。
これを図に表すと次のようになります。
運賃計算をする時、走行時間や走行距離に対して計算をしていきますが、計算時にいくつかのルールがあります。
- 点呼点検時間は出庫前1時間、帰庫後1時間の計2時間を必ず含める。
- 走行時間が3時間未満の場合は走行時間を3時間として計算する。
- 走行時間の端数については30分未満は切り捨て、30分以上は切り上げる。
- 2日以上にわたる運送で宿泊を伴う場合は、宿泊場所到着後及び宿泊場所出発前に必ず1時間ずつ点呼点検時間を設ける。
- フェリーボート利用の航送にかかる時間は8時間を上限として計算する。
- 走行距離の端数については10キロ未満は10キロに切り上げる。
実際に時間や距離を当てはめて、計算してみましょう。
例1)
<基本運賃>
・大型バス 時間制運賃:1時間当たり8000円
・大型バス 距離制運賃:1キロ当たり180円
【時間制運賃】
点呼点検時間(出庫前):1時間
出庫から配車地までの時間:8時から9時までの1時間
配車地から到着地までの時間:9時から18時までの9時間
到着地から帰庫までの時間:18時から19時までの1時間
点呼点検時間(帰庫後):1時間
合計時間:13時間
13時間 x 8000円 = 104000円
【距離制運賃】
出庫から配車地までの距離:20キロ
配車地から到着地までの距離:350キロ
到着地から帰庫までの距離:20キロ
合計:390キロ
390キロ x 180円 = 70200円
貸切バスの合計代金:174200円(104000円+70200円)
例2)
【1日目】
出庫 8:00
配車 8:30
宿場所到着 20:00
※走行距離 335キロ(回送距離15キロ含む)
【2日目】
宿泊場所出発 9:00
到着 17:00
帰庫 17:30
※走行距離360キロ(回送距離15キロ含む)
<基本運賃>
・大型バス 時間制運賃:1時間当たり7000円
・大型バス 距離制運賃:1キロ当たり160円
まずは時間制運賃から計算していきましょう。
<1日目の時間制運賃の計算>
出庫から宿泊場所到着までの時間:12時間
点呼点検時間:2時間(1時間+1時間)
1日目の合計時間:14時間
<2日目の時間制運賃の計算>
宿泊出発から帰庫までの時間:8時間30分
点呼点検時間:2時間(1時間+1時間)
2日目の合計時間:10時間30分
1日目14時間 + 2日目10時間30分 = 24時間30分
⇒ 30分以上は1時間に切り上げ
⇒ 25時間
時間制運賃 25時間 x 6000円 = 150000円
続いて距離制運賃の計算をしていきます。
1日目335キロ + 2日目360キロ = 695キロ
⇒ 10キロ未満は10キロに切り上げ
⇒ 700キロ
距離制運賃 700キロ x 160円 = 112000円
合計代金 時間制運賃150000円+距離制運賃112000円=262000円
料金についての注意事項
【深夜早朝運行料金】
・22時以降から5時までの間に点呼点検時間及び走行時間が含まれた場合に適用。
・2割増以内とする。
【交替者運転者配置料金】
・運賃計算と同様の時間及び距離に料金額を乗じた額とする。
【特殊車両割増料金】
・運賃の5割増以内とする。
以上となります。
貸切バスの運送約款や運賃計算はパターンが決まっているので基本的なルールを覚えておけば大丈夫です。
それでは、良い一日を!
募集型企画旅行の契約の成立時期は、
・旅行者は申込書を記入の上、提出する。
・旅行者は申込金を支払う。
この2つをもって契約成立となります。