旅行業界もSDGsの取り組みが必要だと思うな。バックキャスティング思考がいいってよく聞くけど、フォアキャスティング思考とは何が違うんだろう。
この記事は、そんな疑問に答えます。
- バックキャスティングとフォアキャスティングの違い
- バックキャスティングとフォアキャスティングのメリットとデメリット
- バックキャスティング思考のフレームワークの方法
- バックキャスティング思考の事例
- バックキャスティング思考はSDGsでも必須
- バックキャスティング思考の参考になる本
こんにちは、ツバサです。
旅行業界もアフターコロナは革新的な動きが必要になってきます。
その際に必要な考え方がSDGsビジネスにも使われる「バックキャスティング思考」です。
バックキャスティング思考とよく比較されるのがフォアキャスティング思考で、その違いをしっかりと理解しておく必要があります。
「バックキャスティング思考=革新的なアイデア」がポイントになります。
この記事では、バックキャスティング思考とフォアキャスティング思考の違いを詳しく説明します。
当ブログ「ツナグ旅」を運営しているツバサが書いています。観光業のサステナブルツーリズムを考えるに当たり、SDGsを体系的に学びたいと思い、一般社団法人Beyond SDGs Japan「SDGsビジネスマスター」のコースを修了し認定を受けています。
バックキャスティングとフォアキャスティングの違いは?
現在、国内でもよく聞くキーワードとして「SDGs(持続可能な開発目標)」がありますが、旅行業界でもSDGsの取り組みが必要になってきました。
その際に必要な考え方が「バックキャスティグ思考」です。
バックキャスティング思考は、現在の延長線上を考えるのではなく、未来のあるべき姿や未来の理想の姿を描き、今から取り組めることを考えていく方法です。
例えば、「2030年に売上100億円を達成する」という未来の理想の姿を描き、その目標を達成するためにアイデアを出し合い、今から取り組めることを考えていく流れとなります。
一方で、バックキャスティング思考と比較されるのが「フォアキャスティング思考」です。
フォアキャスティング思考では、今直面している問題を解決しながら、現在の延長線上にある未来に向かって進んでいく考え方になります。
例えば、今足が痛いとなったら、湿布を貼るというような考え方です。
- バックキャスティグ思考
未来のあるべき姿や未来の理想の姿を描き、今から取り組めることを考えていく方法 - フォアキャスティング思考
今直面している問題を解決しながら、現在の延長線上にある未来に向かって進んでいく考え方
SDGsには17の目標と169のゴールが設定されていますが、それを2030年までに達成するためには現在からの延長の姿の延長線上では達成ができないといわれているため、バックキャスティング思考で未来のあるべき姿を描いて、今からやるべきことを逆算して考えて行動することが必要になってきます。
バックキャスティングとフォアキャスティングのメリットとデメリット
バックキャスティング思考とフォアキャスティング思考のメリットとデメリットを見ていきましょう。
バックキャスティング思考のメリットとデメリット
バックキャスティング思考には次のようなメリットがあります。
- 未来の理想の姿を起点にすることができる
- 今あるものに捉われないやり方が見つかる
- より広い視野を持って考えることができる
- 目標が明確のため芯がぶれずに前向きに取り組める
- 中長期的なアクションとなる
- 革新的なアイデアが出てくる
バックキャスティング思考には次のようなデメリットがあります。
- 革新的なアイデアは周りの人に反対されやすい
- 短期的な問題解決とはならない
- 失敗や計画倒れになることがある
フォアキャスティング思考のメリットとデメリット
フォアキャスティング思考には次のようなメリットがあります。
- 今持っているリソースや強みを活かす戦略を立てることができる
- 短期的な目標達成に向いている
- 今直面している課題を改善しやすい
- 現在の延長となるため、失敗するリスクが低い
フォアキャスティング思考には次のようなデメリットがあります。
- 革新的なアイデアが出てこない
- 今のやり方に固執しがちになる
- 視野が広がらない
- 目標が変わってしまう可能性がある
バックキャスティング思考のフレームワークの方法
バックキャスティング思考を実践してみる際のフレームワークの方法は次のような手順となります。
- 未来の目標となる理想の姿を設定する。
- 未来情報から予測できる課題を書き出す。
- 未来の目標達成のためのアクションを考える。
- アクションプランのスケジュールを設定する。
- スケジュールに応じて実行していく。
フレームワーク①:未来の目標となる理想の姿を設定する
バックキャスティング思考では未来の理想の姿が目標となります。
これは現在の延長から考えられる目標ではなく、現在の状況を考えず、本当に理想な姿を描くということが大切です。
未来の姿を描くのは意外と難しく、なかなか理想の姿を描けないかもしれません。
僕自身も「ドラえもんの世界」みたいなことを言ったことがあります。
そこで役立つ方法が、「未来情報」を確認するということです。
未来情報は、いろんなシンクタンク(研究所)が発表しており、2030年、2040年、2050年などに起こる未来を予測しています。
私がよく確認するのは「野村総合研究所」や「博報堂生活総合研究所」の未来年表です。
※野村総合研究所の未来年表はこちら
※博報堂生活総合研究所の未来年表はこちら
自分が関わる地域や都市、業界、産業などの未来情報を確認し、未来情報を収集していくことで未来の理想な姿を描くことができるようになります。
現在の姿から未来の理想を考えてしまうと目標が低いものになってしまったり、翌年には達成してしまいそいうな目標になってしまうため、現在の姿や現在の状況を一旦忘れて考えるようにしましょう。
フレームワーク②:未来情報から予測できる課題を書き出す
未来の理想の姿となる目標設定が決まったら、その目標に関連する課題や直面するであろう課題を書き出していきます。
課題を書き出す際に役立つ方法が「リンケージ」という方法です。
リンケージは、いくつかの層に分けて課題を関連付けながら書き出していく方法になりますが、広い視野で関連付けられる能力を養うことができ、未来情報から身の回りや業界の回りで起きるであろうことへ連想していく力を養うことができます。
つまり、層(エリア)が違いことでどのような変化が起こり、どのように変化を関連付けることができるかを考えていく作業になります。
例えば、旅行業に携わっている場合は次のように層を分けて関連する課題を書き出していきます。
この例は「社会」と「業界」の層に分けていますが、「社会」と「顧客」の視点でもリンケージをしていくことができます。
課題を書き出す際に忘れてはいけないことは、その問題や課題がいつ起こるかも必ず書くようにしましょう。
例えば、次のように課題を書き出します。
- 2023年:75歳以上の人口が2,000万人を超える
- 2025年:東京都の人口が1,423万人でピークになる
- 2025年:キャッシュレス決済比率が40%へ
- 2025年:無人自動走行バス・タクシーを活用した新サービスの事業化
- 2029年:生産年齢人口(15歳~64歳)が7,000万人を割る
- 2030年:訪日旅行者数6,000万人
- 2030年:AIによる職業代替が進み、従業者が735万人減少
- 2030年:通信規格6Gの導入スタート
- 2030年:AIによる職業代替が進み、従業者が735万人減少
このリンケージの作業を通して、業界全体、社会全体の関連する課題がわかるようになります。
目標を達成するためにはどういった課題があり、解決していかなければならないのかを明確にしていきます。
フレームワーク③:未来の目標達成のためのアクションを考える
目標達成のための課題が明らかになったら、それぞれの課題に対してのアクションをできるだけ多く考えていきます。
社内で起こる課題、社外で起こる課題、業界内で起こる課題、他業界で起こる課題、社会で起こる課題など、様々な課題に対してのアクションを考えます。
ここで重要なのは3つあります。
- 課題に対してのアクションが実際に可能かどうかをまずは考えず、できる限りアイデアを出すこと。
- それぞれのアクションがどれくらい時間を必要とするかは、このタイミングでは考えないこと。
- いろんなアイデアが出ますが、他人のアイデアを否定しないこと。
この3つを守ることでいろんなアイデアが出ます。
そのアイデアの中には「革新的なアイデア」があるかもしれません。
また、バックキャスティング思考では現在の姿や現在の状況から考えたアイデアではないため、革新的なアイデアが出てくる可能性が高いです。
それは前例に捉われない破壊的創造なアイデアかもしれません。
そういったアイデアは10人いたら8人には反対されるでしょう。
そして、100個アイデアを出しても最終的に採用できるのは1個、2個です。
そのため、いろんなアイデアを制限なく発表していくことが、このフレームワークでは大切なことになります。
未来の理想の目標の達成には必要であれば、強い意志を持って進めるようにしましょう。
フレームワーク④:アクションプランのスケジュールを設定する
課題とアクションを全て書き出せたら、次は実行するためのスケジュールを立てていきます。
未来の理想の姿の目標を達成するためには、どの順番でどの課題に対してどのアクションを起こしていくのがよいかを話し合います。
書き出した課題の中には解決に時間がかかるものがあるかもしれません。
また、書き出したアクションの中には実行するのに時間がかかるものがあるかもしれません。
そのため、じっくりとスケジュールを組み立てながら考えてみましょう。
フレームワーク⑤:スケジュールに応じて実行していく
アクションプランのスケジュールの設定が終わったら、スケジュール通りにアクションを実行していきます。
課題に対してアクションがスムーズに実施できない場合が出てくるかもしれません。
その際は、臨機応変に、そして柔軟に対応しながら進めるようにしましょう。
バックキャスティング思考は中長期的なプランで数年単位や10年単位の長丁場になります。
そのため、目標達成に大事なことは「ぶれない意志」となります。
バックキャスティング思考のトヨタの事例
バックキャスティング思考の具体的な事例でよく挙げられるのが「トヨタ」です。
トヨタは2015年10月に「トヨタ環境チャレンジ2050」を公表しました。
6つのチャレンジがあり、「CO2ゼロ」や「プラスの社会」を目指した取り組みを推進しています。
- 2050年グローバル新車平均CO2排出量の90%を削減(2010年比)を目指す
- 2050年グローバル工場CO2排出ゼロを目指す
- ライフサイクル全体でのCO2排出ゼロを目指す
- 各国地域事情に応じた水使用量の最小化と排水の管理
- 日本で培った「適正処理」やリサイクルの技術・システムのグローバル展開を目指す
- 自然保全活動の輪を地域・世界とつなぎ、そして未来へつなぐ
この6つのチャレンジで分かりやすいのが、チャレンジ1と2です。
2050年の理想の姿を描き、それに向かってアイデアを出して取り組んでいくことで目標達成をするというものです。
CO2排出量90%削減やCO2排出ゼロの目標は、フォアキャスティング思考で考えてしまうと今の姿や今の現状の延長では想像できない目標です。
未来の理想の姿から逆算して今から取り組んでいくということで、革新的なアイデアが必要になってきます。
目標達成には、バッテリーの電力だけで動く「EV(電気自動車)」や自宅や充電スタンドで充電できる「PHV(プラグインハイブリッド自動車)」、24時間耐久レースに参戦したことでも話題になった水素と酸素で発電して動く「FCV(燃料電池自動車)」などの革新的なアイデアが必要となってきます。
バックキャスティング思考はSDGsでも必須
現在、旅行業でも観光業でも必要となっている「SDGs」の取り組みでは、バックキャスティング思考が求められます。
観光業に関わる未来情報として明らかになっていることを2つ挙げると、「2030年に訪日外国人観光客6,000万人」と「2030年にサービス業の人材不足が400万人」があります。
その未来情報をもとにどのような予測があり、どのような課題があるのかをリンケージを通して書き出す必要があります。
今の旅行業や観光業の在り方では2030年の理想の姿は思い描けず、課題解決もできないでしょう。
そのため、2030年にどのような理想な姿が必要なのかをしっかりと考える必要があります。
バックキャスティング思考の参考になる本
バックキャスティング思考はフレームワークを読めば、大まかな流れは理解できるようになりますが、具体的にどのような事例があるのかを知ることはとても大事です。
僕がおすすめするバックキャスティング思考の本を紹介します。
特に1冊目の「バックキャスト思考」で行こう!持続可能なビジネスと暮らしを創る技術は、地域の町づくりや離島の事例が書かれており、観光業にも役立つ事例を知ることができます。
是非一度読んでみてください。
以上となります。
バックキャスティング思考はビジネスをする上でとても大事な思考です。
また、SDGsを取り組む上でも必須の考え方になるため、これを機に覚えるようにしましょう。
それでは、良い一日を!