旅行業や観光業でSDGsに取り組んでいるように見えて、実は実態が伴っていない会社がたくさんありそう。そういう見せかけだけの「SDGsウォッシュ」っていうみたい。具体的な事例があったら知りたい。
この記事は、そんな疑問に答えます。
- SDGsウォッシュとは?
- SDGsウォッシュを疑われているユニクロの事例は?
- SDGsウォッシュの言葉の元になったグリーンウォッシュとは?
- 中小企業がやりがちなSDGsウォッシュとは?
- SDGsウォッシュのリスクは?
こんにちは、ツバサです。
ここ最近、毎日「SDGs(持続可能な開発目標)」を耳にするようになりました。
大手企業はすでに取り組みを始めていますが、中小企業に至っては取り組みがほとんど進んでいません。
先日、立教大学とJTB総合研究所が行った「観光産業における SDGs の取り組み推進に向けた組織・企業団体の状況調査」では、SDGsに取り組んでいる業種の中で観光業が20.3%と最も低かったです。
さらに観光業の中でも旅行業に関しては最低の16.0%でした。
SDGsの理解ないままにとりあえず取り組みらしいことを発信しておこうとなると、もちろん実態が伴わないものになってしまいます。
それを「SDGsウォッシュ」といいます。
この記事では、見せかけだけの「SDGsウォッシュ」について具体的な事例を挙げて詳しく説明します。
当ブログ「ツナグ旅」を運営しているツバサが書いています。観光業のサステナブルツーリズムを考えるに当たり、SDGsを体系的に学びたいと思い、一般社団法人Beyond SDGs Japan「SDGsビジネスマスター」のコースを修了し認定を受けています。
SDGsウォッシュとは?
SDGsには国連で定めた17の持続可能な開発目標がありますが、企業によってはSDGsに取り組んでいるように見せて、実態が伴っていないビジネス展開をしているところがあります。
それらの見せかけだけのSDGsの取り組みを「SDGsウォッシュ」といいます。
「SDGsウォッシュ」は、17の持続可能な開発目標に取り組んでいるように見せかけて、実態が伴っていないビジネスのことをいいます。SDGsウォッシュの元になっている言葉が「グリーンウォッシュ」で、はっきりとしない言葉の表現や主張をしたり、環境汚染をしているにもかかわらずグリーン商品を販売したりしている時に用いる言葉となります。
例えば、SDGsの取り組みをホームページ上で掲載しているにも関わらず活動実態がなかったり、環境により商品を販売しているにも関わらず生産過程で子供たちに強制労働をさせたりすることです。
SDGsウォッシュを疑われているユニクロの事例は?
2020年に話題にもなったSDGsウォッシュの疑いがかけられた企業83社に中には、誰もが知っている有名メーカーのナイキやアディダス、アップル、サムスンなどが含まれていました。
それは、中国各地に工場がある企業がウイグル人に強制労働をさせているのではという内容です。
つまり、世の中のためになる商品を作っていたとしても、裏では強制労働の実態があるという表面上だけよく見せているというSDGsウォッシュになります。
そして、その83社の中には日本企業の名前もあり、ファストファッション業界でトップを走る「ユニクロ」や最近ではホテル産業にも参入している「無印良品(良品計画)」の12社が含まれていました。
- 日立製作所
- ジャパンディスプレイ
- 三菱電機
- ミツミ電機
- 任天堂
- パナソニック
- ソニー
- TDK
- 東芝
- ユニクロ
- シャープ
- 無印良品
ユニクロの事例を挙げると、ユニクロでは新疆ウイグル自治区で作られた綿を使っているため、ウイグル人の強制労働に繋がっているという疑いをかけられました。
この問題が影響して、フランスではNGOがウイグル産の綿を使い続けるユニクロを含む4社をパリ裁判所に告発したり、アメリカではユニクロが新疆ウイグル自治区の強制労働を巡る輸入禁止措置に違反したとして、ユニクロの衣料品を港で差し止める事態に発展しています。
ウイグル産の綿の使用について、スウェーデンの衣料品大手「H&M」やアメリカのスポーツ大手メーカーでもある「ナイキ」がウイグル産の綿の使用をしないという表明をすると、中国国内ではH&Mやナイキに対しての反発や不買運動が起こりました。
ユニクロ側はウイグル人の強制労働については政治的問題があると発言しており、具体的なコメントは控えている状態です。
そのため、逆に日本や他国の消費者は不信感を募らせてしまい、こちらも不買運動が起こりかねません。
それだけ、最近の消費者は人権問題に敏感になっているといっても過言ではありません。
SDGsウォッシュの言葉の元になったグリーンウォッシュとは?
「SDGsウォッシュ」の言葉の元になったのは「グリーンウォッシュ」という言葉といわれています。
この「グリーンウォッシュ」という言葉は、イギリスにあるFuterra社がマーケター向けの資料「SELLING SUSTAINABILITY(サステナビリティを売ること)」で詳しく解説をしています。
グリーンウォッシュには10個のポイントがあります。
- Fluffy language(ふわふわした言葉)
明確ではない言葉や表現を用いること。例えば、エコフレンドリー。 - Green Products V dirty company(環境に汚染をしているにもかかわらず、グリーン商品を売る企業)
例えば、河川を汚染する工場で作られた持続性の高い電球。 - Suggestive pictures(暗示的な写真や図の使用)
根拠がないにもかかわらず、環境に良いと思わせるようなイメージ図を用いること。例えば、煙突から煙の代わりに花が出ているイメージ図。 - Irrelevant Claims(的外れな主張)
企業活動のほとんどが反環境保護になっているにもかかわらず、ほんの一部で行っている環境活動を強調すること。 - Best in class(相対的に良く見せる)
他社が環境保護活動をほとんど行っていない場合に自社の活動も少ししかないにもかかわらず、他社よりも環境に配慮していると発表すること。 - Just not credible(信用できない表現)
危険な商品をグリーン化しようとしても安全にはならない。例えば、エコフレンドリーなタバコ。 - Gobbledygook(意味不明で分かりにくい言葉や表現)
科学者だけが理解できるような専門用語や情報ばかりを使うこと。 - Imaginary friends(空想の友人=捏造)
自社で作ったラベルであるにもかかわらず、第三者が認めたようにして捏造すること。 - No proof(証拠がない)
正しいかもしれないが証拠が全くないこと。 - Out-right lying(まったくの嘘)
嘘の主張をしたり、捏造したデータを使うこと。
このグリーンウォッシュは、環境に配慮していると見せかけている企業を揶揄する時に使われます。
グリーンウォッシュによって、商品に対しての消費者の信頼失墜やパートナーシップを結んでいる企業との取引停止などを引き起こすことになります。
このグリーンウォッシュの言葉が元になり、SDGsウォッシュの言葉ができたといわれています。
そのため、グリーンウォッシュで掲げられている10個のポイントをしないようにすれば、SDGsウォッシュも防げる可能性が高くなります。
中小企業がやりがちなSDGsウォッシュとは?
SDGsビジネスや取り組みを行う際、中小企業がやりがちなSDGsウォッシュがいくつかあります。
- ホームページで環境保護活動を宣言しているにもかかわらず活動実績がない。
- 人道支援は最初の1回だけで続いていない。
- 会社としてグリーン宣言した後も環境汚染が疑われる商品を販売し続けている。
- 社外に対してはクリーンなイメージを表現していても社内のスタッフには長時間労働を課している。
- 会社として持続可能な取り組みを行うと言っても消費者に対しての情報発信がない。
- 今あるサービスを無理矢理SDGsの17の目標に当てはめる。
- そもそも持続可能な未来の理想の姿を持っていない。
- 具体的な取り組みアイデアがないのに助成金や補助金を強調する。
このように身近でも起こりそうなことばかりです。
もしかしたら、今働いているところがSDGsウォッシュに当てはまっているかもしれません。
もしSDGsウォッシュに当てはまっていると感じたら、すぐにでも対応した方がよいでしょう。
消費者は思った以上にすぐ気付き、今の世の中ではソーシャルメディアなどを使ってマイナス情報を拡散されます。
また、社員の扱いが悪い場合には内部告発という最悪なケースもありえるため、企業の在り方をしっかりと考えなければなりません。
SDGsウォッシュのリスクは?
SDGsウォッシュをするとどういったリスクが企業にあるのかを考えてみましょう。
- 消費者からの信頼失墜
- 消費者の不買運動
- 売上の大幅低下
- ソーシャルメディアでネガティブ情報の拡散
- パートナーシップ企業との契約破棄
- 社員のモチベーション低下や退職
- 社員の内部告発
- 資金調達が困難になる
- 金融機関からの評価が下がる。
- 金融機関からの融資ストップ
このように消費者から社員までの意識にまで影響し、さらに資金調達や金融機関までにも影響していきます。
これはSDGsが個人でも行える活動があることやESG投資がSDGsには関係しているからです。
また、今現在20歳以上の人は学校でSDGsを学んでこなかったと思いますが、2020年度からは小学校、2021年度から中学校、2022年度からは高校で「新学習指導要領」が実施され、学校でSDGsを学ぶ機会が持てるようになります。
そのため、この先5年、10年経つと今10代の世代が大人になった時に彼らはSDGsネイティブとして社会に出てくるようになります。
一方で今20代以上の人がSDGsの知識がなく理解が乏しければ大きなギャップが生まれてしまい、時代に取り残され、実態の伴わないSDGsウォッシュをしかねません。
そのため、企業としてはSDGsウォッシュにならないように取り組んでいかなければなりません。
以上となります。
SDGsビジネスを行う上でSDGsウォッシュは絶対にしないようにしましょう。
そのためにはまずはSDGsについてしっかりと理解することです。
それでは、良い一日を!