海外旅行の渡航者数は増えているのに、旅行会社が苦戦しているのはなんでだろう。航空券も取りにくくなってきたし、旅行会社に未来はあるのかな。
この記事は、そんな疑問に答えます。
- 旅行会社が今まで行ってきたこととは?
- 旅行会社が苦戦している理由とは?
- 旅行会社が生き残る道とは?
こんにちは、ツバサです。
今日は海外のホテルへのマーケティングレポートを25ページ程書いたので、少し頭が疲れ気味ですが、こういう日は自分の興味があることを題材にして記事を書こうと思います。
先日、「ダイナミックプライス」に関しての記事を読みました。
いよいよ「ダイナミックプライス」がやってきたという思いですが、トラベルボイスの記事によると、「2020年春を目途にJALとANAが包括旅行運賃(IT運賃)にダイナミックプライスを導入する方針を固めた」ということでした。つまり、パッケージツアーで使う航空券の料金が変動するということです。
5年くらい前にはこの予感はすでにしていたので、いよいよ始まるかという印象です。
この記事では、そのダイナミックプライスに関連して、旅行会社の現状と未来像を詳しく書いてみたいと思います。
☆令和5年度版☆
☆合格者が作ったツナグ旅オリジナル☆
☆直前対策向け教材&問題集☆
☆累計販売数750部突破☆
合格者のツバサ自身が試験勉強をもとに
ポイントまとめや問題集を作りました
<合格者の声>
こちらから
【国内地理オリジナル問題集】
購入はこちらから
【法令・約款ポイントまとめ】
購入はこちらから
【海外地理オリジナル問題集】
購入はこちらから
【JR運賃計算オリジナル問題集】
購入はこちらから
★ツナグ旅大学インスタグラム★
フォローするだけで
総合・国内旅行業務取扱管理者の問題を
ストーリーのクイズで勉強ができます
旅行会社が今まで行ってきたこととは?
僕自身、旅行業界に15年以上携わっていますが、2000年前半は海外旅行を雑誌から買う時代でした。今では想像もできないですよね。
その後、インターネットから海外旅行を購入する時代に変わっていきました。
2010年頃からはOTAが少しずつ台頭し始め、今となってはOTAの成長は鈍化しているものの、顧客の旅行会社離れが始まっている程です。
また、2012年以降、訪日外国人観光客の数が急激に伸びたこともあり、日本発の航空券が取り辛くなりました。
【2000年前半】
・エービーロードの雑誌版が発行されており、雑誌にパッケージツアーを掲載し、販売をしていた。
【2010年以降】
・OTAの販売が徐々に伸びてきた。
【2012年以降】
・訪日外国人が急激に増えたことで日本発の航空券が取り辛い状況となった。
旅行商品のチャネルは、OTAが台頭してから大きく変わりました。航空会社は直販を強化し、ホテルはOTAを通して販売するという、まさに仲介業者として機能していた旅行会社のシェアが減少していきました。
良い例は、航空会社が販売する航空券は365日前から購入することが可能となりますが、旅行会社が包括旅行運賃(パッケージツアー用)の航空券を予約する場合、「解禁日」というルールがあり、その解禁日までは予約ができません。つまり、航空会社がさきに直販である程度の座席を販売したいという意図があります。
また、大手や中堅の旅行会社が今まで販売してきた海外旅行商品は、一言で言えば「効率重視」のパッケージツアーばかりです。例えば、送迎を集約するために大型のホテルを使うことや観光は同じルートで回るなど、混載ということにポイントを置いてきました。
そのため、例えば、トリップアドバイザーなどの口コミサイトで実際に利用した観光客が評価をするランキングでは上位に入っているホテルを旅行会社のパッケージツアーでは使っていなかったり、実際にパッケージツアーで使っているホテルは口コミランキングでは100位とか150位のホテルがあるなど、旅行会社都合の商品が非常に多いのが現状です。
顧客目線で言うと、OTAのエクスペディアでタイ・プーケット島のホテルを調べてみると、取り扱いホテル数が2862軒あります。一方で主要旅行会社が取り扱っているタイ・プーケット島のホテルは80軒前後です。数が多いから良いというわけではありませんが、顧客の選択肢が多くなっているということは現実に起こっています。
そのため、実際に顧客が泊まってみたいと思う旅行商品がパッケージツアーにはなかったり、行きたい観光地が含まれているツアーがなかったりすることで、旅行会社離れが起こり、顧客自身も個人手配で海外旅行に行くようになってきました。
今では、全体の40%以上の日本人旅行者が自分で飛行機とホテルを手配して、海外旅行をしています。
旅行会社が苦戦している理由とは?
なぜ旅行会社は苦戦をしているのかを見ていきましょう。
旅行会社が苦戦している理由は、次の通りです。
- 航空会社が直販を強化している
- 航空会社のマイレージプログラムが充実している
- 航空券の搭乗以外にもショッピングなどでマイレージを貯めることができ、ロイヤリティプログラムが充実している
- 顧客の泊まりたいホテルがOTAでは販売されている
- 口コミサイトが増えたことで旅行会社が使っていないホテルを顧客が簡単に知ることができる
- 旅行会社の商品に価値がない
- 旅行会社のスタッフに知識がない
最近では、旅行会社のパッケージ商品の金額とOTAで購入する場合の金額を比較検討している顧客も非常に多いです。
ここに苦戦している理由が大きく見えます。
つまり、旅行会社はOTAで販売しているスケルトンの航空券+ホテルの商品を同じように販売しているということです。
ビジネスをする上で大切なことは、ブルーオーシャンを探す、あるいはレッドオーシャンの中で隙間を見つけるのいずれかです。
しかしながら、航空券+ホテルの商品で戦うということは、まさにレッドオーシャンにどっぷりつかっている状態を意味します。それは単純な価格競争のみを引き起こし、薄利多売の原因となります。そのため、利益率が3%や5%などもよくあることです。
関連記事
旅行会社はどのようにパッケージツアーを造成するのかというと、航空会社からの包括旅行運賃を使って計算をしますが、航空券には同じエコノミークラスでも料金体系が分かれており、旅行会社はパッケージツアー代金を他社よりも安くするために、一番安い料金を使って計算をします。
これは何を引き起こすのかというと、飛行機が取れない状態でもパッケージツアー商品が掲載されたままの状態となり、顧客が旅行会社へ問い合わせをすると「満席です」と回答されるということになります。
以前、旅行会社はその際、「満席です。しかし追加代金を払えばお席が取れます」という、詐欺のような案内をしていました。これはおとり広告に当たり、日本旅行業協会も事の重大さを認め、現在では「満席の日程は商品掲載をしない」、あるいは「座席確保できる料金での掲載をする」のいずれかに定めています。
もし「ダイナミックプライス」が導入されれば、旅行会社側のシステム次第となりますが、基本的には「今現在座席が取れる金額」ということが大前提となります。つまり、満席=航空会社側の座席が本当にない、ということになります。
また、「ダイナミックプライス」が包括旅行運賃に導入されれば、つまりそれは「時価」であり、固定金額にて旅行商品の掲載ができなくなることで、今後大手旅行会社のパンフレットはなくなっていくと予想します。
旅行会社が生き残る道とは?
今後、旅行会社が生き残っていく道はあるのでしょうか?!
航空券+ホテルの旅行商品はOTAとの競合、「ダイナミックプライス」の導入で旅行パンフレットはなくなっていく展開という中で、旅行会社が勝機を見出すにはどのようにしていくべきか。
僕個人的な意見としては、次の通りです。
- 旅行商品に価値を付けて売る(=価値を売る)
- 旅行商品やコンサルティングに専門性を持つ
- 現地を知り、差別化した仕入れ力を持つ
この3つに尽きます。
関連記事
旅行商品に価値を付けて売る(=価値を売る)
旅行商品に価値を付けて売るということは、つまりは価値を売るということです。
現在の旅行会社の商品は、現地のランドオペレーターができる、できないにより商品内容が変わることがよくあります。例えば、このホテルは取り扱っていない、この観光地へのツアーは斡旋していない、こういったサービスはできないなど、現地にいるからこそのネガティブ思考がよくあります。
僕自身も現地のランドオペレーターを5年程経験しましたが、海外で日本人観光客を受け入れるということは、苦労そのものでした。そのため、ランドオペレーターができる、できないという線引きは十分に理解ができます。しかし、できるように準備をしていく、環境や体制を整えていくということも同時に大事です。
旅行商品の価値というものは、顧客の問題を解決するソリューションであることが理想です。それを旅行商品に組み込んで価格を上げるのか、それを別出しにして販売するのかは旅行会社次第です。
航空券+ホテルのような単純な足し算でできる旅行商品には、実際に海外で顧客が困るであろう問題や不安に思うであろう問題を解決するソリューションは全く含まれていないため、そこから利益を増やすことは至難の業です。
関連記事
旅行商品やコンサルティングに専門性を持つ
現在、インターネットの普及により、海外の旅行情報を簡単に手に入れることができるようになりました。
つまり、旅行会社で働いていても、「現地を知らない販売店のスタッフ」と「インターネットで旅行情報を見ている顧客」の知識は同じということです。
そのため、旅行会社のスタッフがホテルや観光地の知識を持っていなければ、旅行会社としての専門的な情報提供をすることができません。そうするとOTAのようなインターネット上で旅行商品を購入しても何も変わらないということになります。
実際、旅行会社のホームページよりもOTAのサイトの方がホテル画像が多く掲載されていたり、アメニティの情報が掲載されていたりもします。また、口コミサイトでは実際に宿泊した人や訪れた人の活きた情報を得ることができ、旅行会社のホームページのコンテンツ量もすでに劣っていることが多いです。
僕自身、モルディブのホテルのセールスマーケティングの仕事にも携わっていますが、大手旅行会社の販売店舗を回って、販売スタッフにモルディブの販売についてのリスニングをしますが、全員から「ホテルがわからない」というコメントを頂きます。それだけ、自社の旅行商品であってもわからないという状況が現実起こっているということです。
第3種のような旅行会社では、事前に作られた旅行商品がなく、コンサルティングをベースに見積もり旅行を提案していきますが、現地視察を十分にしているため、顧客が旅行に対して抱えている心配や不安をきちんと出発前に解決しています。そういった旅行会社の旅行商品の価格は決して安くはありません。それでも顧客は購入をしているのです。
こういった専門的な知識や経験、そしてコンサルティングがこれからの旅行会社には必要です。
関連記事
現地を知り、差別化した仕入れ力を持つ
最近の旅行会社の企画担当者は、現地を知らない状態で旅行商品を企画していることがあります。
それでは、旅行商品にこだわりや深みは出ません。
まずは、企画担当者が現地を自分の足で歩き、見て回る。現地視察を通して、旅行商品に使えるかどうかを自らが判断し、ホテルや現地旅行会社と商談をするということが大切です。
商品の仕入れに関して、全てランドオペレーター任せということもよくあります。しかし、ランドオペレーターに全てを任せてしまうと、ランドオペレーターがハンドリングしやすいように内容を調整されてしまいます。深くまで突き詰めると差別化したサービスができるものを、企画の段階で「できない」と言われてしまうことと同じです。
また、ホテルの仕入れに関しては、日本の旅行会社の仕入担当者は「結果のコミットメント」をしません。ここでいう結果というのは、ホテルへの送客を意味します。例えば、「1年間で1000ルームナイトの送客をします」ということです。
結果をコミットメントして初めて、例えば、ホテルから特典を得ることができたり、通常よりも数十ドル安いレートで仕入れることができます。これによりOTAにはできない差別化した仕入れをすることができます。
しかしながら、日本の旅行会社は結果のコミットメントをせず、ホテル側には特典を出してくれと言ってしまいます。これでは、結果が伴わず、ホテル側のマイナスで終わってしまい、次のビジネスに繋がりません。
100点満点の試験に対して、「100点取ります」という生徒と「何点取れるかわかりません」という生徒では結果が全く異なります。それと同じです。
このような慣習が今まで続いてきたことで、海外のホテルからは日本マーケットは「期待できないマーケット」に位置付けられています。
関連記事
以上となります。
旅行会社の現在の状況はとても厳しいです。旅行商品のチャネルが変わって、顧客の旅行会社離れが始まっているにもかかわらず、旅行会社のアクションはとても遅いです。
アクションの遅さで言うと、旅行会社の動画素材の導入もとても遅れています。旅行会社のYoutubeチャンネルを見てみると全く機能していません。今のトレンドを考えると、旅行商品ごとに30秒程の紹介動画があってもいいくらいです。
旅行会社の未来像は。。。。。生き残るには多難の道です。
それでは、良い一日を!
ダイナミックプライスとは、料金が変動することである。